〜 燃え拡がりに与える重
力の影響 〜
《 はじめに 》
我々は1gという
重力環境下で生
活しています。
身近な生活の中では,この重力の大きさは大きく変化することはありません。しかし,宇宙環境利用が促進され,人間が宇宙へ進出した場合,その生活は微小重
力環境下で営まれることになります。
(C)宇宙開発事業団(NASDA) もし宇宙空間で
の長期滞在が一
般的となる時代が
きた場合,無重力環境での火災に対する安全性の確保は生命維持に直結する重要な問題となります。しかし宇宙ステーションなどの建設に用いる多くの材料が,
宇宙空間へと持ち込まれた時に,重力変化に対する材料の燃焼性状の変化について完全に明らかとなっているとは言えません。
(C)宇宙開発事業団(NASDA)
弘前大学理工学部
知能機械工学科 伊藤・鳥
飼研究室では,様々な重力下での火災安全性確保のために,重力を制御し,その環境下で可燃性物質上を燃え拡がる火炎について実験的に研究しています。特
に,火災発生時に重要となる火炎の燃え拡がり現象に対する重力の効果を明らかにし,地球環境以外でも利用できる火災安全評価法の基礎を確立することを目指
しています。
このHPでは,これまでに行った微
小重力環境下で行った火炎の燃え拡がり実験と,過重力環境下での
火炎の燃え拡が
り実験の結果について紹介します。
《 燃え拡がりについて 》
火災
初期におい
て,何らかの原
因で発生した
火
炎は,周囲にある可燃物上を燃え拡がることで,その火災規模を拡大します。この火炎の燃え拡がり速度を知ることが,火災安全性の確保に重要となります。
1.
火炎規模の拡大の図
o燃
え拡がり速度
は,火炎の根っ
こにある火炎基
部(edge flame)における火炎から可燃物への輸送される熱量が重要であ
ることが知られています。
2.
火炎基部


《 重力の大きさの制御
方法について 》
回転 = 高重力環境 落す
= 微小重力環境
・微小重力実験施設 : 日本無重量総合研
究所(MGLAB)が保有する落下塔設備

・過重力実験施
設 : JAXA
筑
波宇宙センターが保有する旋回腕加速度実験設備

* 各
設備の詳
しい内容はリンク先へ
o実
験ラックには
風洞が搭載され,このラックご
と
微小重力実験用落下カプセルや過重力実験用旋回腕に設置して実験を行います。また,実験ラックはガス供給用のボンベを搭載しており,風洞内には約0.1 m/sで流れを形成すること
ができます。

1.
微小重力環境下での
燃え拡がり
・
燃え拡がる火炎の形状は,重力が減少すること
により浮力の影響が無くなり,背を丸めたような火炎形状と
oな
ります。
・
浮力によって誘起される流れが,微小重力環境
では存在しないため,火炎への酸素供給が流れによって
では
oな
く拡散現象によって行われる。拡散現象による酸素の輸送は,流れを伴う通常重力場に比べて大
きく減少
oさ
れる。その結果,火炎の燃焼反応が抑制され,通常重力場では火炎の色が煤
(す
す)が形成され黄色い火炎が,
o微
小重力環境では火炎全体が青色となっています。
※ 可燃性固体は「ろ紙」2.
重力の変化に対する
火炎伝ぱ速度の変化
下
の図は,ろ紙を可燃性固体として様々な重力環境下で燃え拡がり実験を行い取得した燃え拡がり速度
を示しています。横
軸に重力を,縦軸に燃え拡がり速度をとっている。多少,ばらつきがあるが重力の増加に伴い燃え拡がり速度は増加して行くことがわかります。
この結果から考えると,重力が増加する環境で
あ
るほど火災安全性の低下が懸念されることになります。逆に,重量が減o少する環境下では,火災の
燃え拡がりという意味では,安全性が増加することになりま
す。

*
現
在,重力の変化
範
囲を広くして実験を行うために,弘前大学に重力制御落下搭実験装置の建設を予定しています。
o