図8 隣接気孔間のひずみ分布

図7 円孔縁近傍の隣接する気孔

図6 八角形試験片の圧縮時の変位計測

図5 スペックルパターン

図3 破壊強度のWeibull統計

図4 スペックルパターン干渉法の原理

 一方、微小な計測視野(“微視的な計測”と呼ぶ)では、気孔の隅々における変位分布が計測が可能で、気孔の存在によって生じる変位(ひずみ)分布が計測されています。円孔の周りの応力が集中する場所(図7)に隣接する気孔間の、微小な領域における詳細な結果が得られています。表面からは見えない隠れた気孔の影響を受けた変位(ひずみ)分布(図8)で、このような材料の微視的構造に起因する分布は、非接触で且つ高精度な計測法であるESPIを用いることによって初めて得られるもので、材料の特性を知る上で重要な情報となります。

変形による位相差が2π変化する毎に差画像の明暗が繰り返され、その干渉縞を変位の等高線として変位を計測できることになります。この方法では、面内方向dx、dy及び面外方向dzの測定分解能は、次式で与えられます。

 このESPI法では、レーザ光を粗面な物体に照射すると物体表面の凹凸に対応した反射光がランダムに干渉し合い、スペックルパターン(縞模様)が形成される(図5)ことを利用します。この物体光と参照光によるスペックルパターンをCCDカメラ上で重ね合わせると、被測定物がλ/2(λ:レーザの波長)変位する毎に明暗を繰り返します。被測定物の変形前後でのスペックルパターンを、CCDカメラにより電子的に記録し両者の差の絶対値をとると、


知能システム材料とその評価技術の開発

局所的な変形(ひずみ)の計測

本講座は、新素材、耐熱材料やインテリジェント材料の設計・評価に関する研究を、ナノ・ミクロ領域にまで踏み込んで行っています。さらに、材料機能の有効活用を図り、自動車・電子機器などの身の回りの機械・装置はもとより、高機能な医療デバイスなどの開発を通して、福祉や環境などにおける生活の質の向上に貢献することを目指しています。 ここでは、この講座で研究している分野の中から、環境機器などへの利用で脚光を浴びている、多孔質セラミックス(図1)の評価に関する研究について紹介します。


多孔質セラミックス

 三次元的な複雑な微視構造(図2)をもつ多孔質セラミックスは、材料自体に構造的な要素を有するので、それを利用するには破壊強度特性の把握と、それに関連する局所的な変形(ひずみ)挙動の高精度な計測が重要となります。

破壊強度特性の評価

 気孔寸法の異なる7種類の多孔質セラミックスの破壊強度特性を調べた結果、通常の緻密質な構造用セラミックスと比較して、破壊強度は低いが材料ごとのデータのばらつきは小さいことが分かりました。このことは、Weibull 統計処理(図3)に従えば、データの傾きを表すWeibull係数値が高いということになります。多孔質セラミックスでは17〜26で、緻密質なセラミックスの場合の値5〜20と比較して高い値を示しました。

これまでの研究で、セラミックスの破壊強度は欠陥寸法に大きく依存することが知られていますが、緻密質セラミックスでは破壊の原因となる欠陥が材料の生成・焼結時に生じて広く疎らに点在しているのに対し、多孔質セラミックスではランダムに且つ無数に存在する気孔が破壊の起点となり、その結果破壊強度値は低下しますが、そのばらつきは小さくなったと考えることができます。 なお、破壊強度は平均気孔寸法の増大とともに低下しており、また破断面を観察すると、平均気孔寸法が比較的小さい場合には破断面の凹凸が全体的に小さく、気孔寸法が大きい場合にはその凹凸は激しくなり、しかしどの材料も脆く破滅的な破壊の様相を示していることも分かりました。この破断面の凹凸は、破壊が気孔を跨いでジグザグに進展した結果として形成されたもので、気孔寸法の大きいものほど顕著に現れたと考えることができます。

 多孔質セラミックスのように、材料自体に構造的な要素を有する材料を対象とする変位(ひずみ)の計測では、対象物体が計測技術によって何らの影響も受けないことが重要です。このような計測には、光のコヒーレンス性を利用した計測技術が有効です。中でも、図4に示す電子スペックルパターン干渉法(Electronic Speckle Pattern Interferometry、 以下、ESPI)は、物体の変位を非接触で計測できるばかりでなく、広い範囲を対象として表面の面内方向に2軸、面外方向に1軸の合計3軸方向の変位を、同時に得られるという優れた特徴を有しています。

ここで、δは縞1本当たりの変位量を示す縞分解能で、装置に依存します(例えばδ= 0.12)。この例では、測定分解能は0.1μm程度となり、物体表面において高精度な変位の計測が可能となります。

 さて、多孔質セラミックスは無数の気孔を含むため、その表面は複雑な凹凸を呈しており、このような場合の変位はどのように計測されるでしょうか。ESPI法の空間分解能は、外部出力される計測データ数と測定領域のサイズにより定まるデータ間隔として与えられます。したがって、気孔寸法が計測視野に比べ相対的に小さくなるような場合(“巨視的な計測”と呼ぶ)には、気孔を表面の凹凸としてのみ認識し、気孔の存在は実質的に無視された変位が計測されます。巨視的な計測結果の例を図6に示します。八角形の多孔質セラミックスに上下の角で圧縮荷重を作用した場合の変形で、気孔のない場合を対象とした解析結果と、荷重作用点の近傍を除いて一致していることが分かります。

図2 多孔質セラミックスの微視構造

図1 多孔質セラミックス

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(2005年12月)


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