1.壁面衝突微粒化に関する基礎的研究

液噴流が壁面に衝突して液噴流を生成する現象は,液体燃料を使用する原動機内でよくみられる現象であり,また自然界でもよくみられる.一方,微粒化技術の観点から見ると,薄い液膜を微粒化すると良質の噴霧が得られるため,この方法を応用すれば高性能な微粒化装置を開発できる.本研究は,液噴流が壁面に衝突してできる液噴流を理論的および実験的に解析し,その特性を把握するとともに,この方法を応用して高性能なインジェクターを開発することを目的とする.下図は,理論解析モデルならびに壁面上の液膜厚さの測定結果を示している.膜厚の測定は触針法によった.膜厚分布の測定結果ならびに理論解析結果を比較すると,両者はよく一致している.

2.液滴分裂に関する基礎的研究

液滴の分裂現象は,燃料液滴が高速で飛行する原動機内でみられる現象であり,この現象が噴霧特性,ひいては燃焼特性,排気ガス特性を左右する場合がある.本研究は,噴霧の生成や流動の数値シミュレーションで必要とされる液滴分裂の数値モデルを開発することを目的とする.まずはじめに液滴分裂現象を風洞を用いて明らかにするとともに,PIV法を用いて液滴周りの気流を調べることにより,分裂のメカニズムを明らかにした.次のステップとして,実験による解析結果を基に液滴分裂現象の数値モデルを開発する.下の左図は,気流速度を変えたときの液滴分裂現象の様子を示しており,気流速度によって分裂メカニズムが異なることが分かる.また,右図はPIV法による液滴周りの気流の様子を示しており,液滴後流には左右逆向きの2つの渦が形成されているのが分かる.

3.ノズル内でのキャビテーション発生と微粒化特性

ノズル内でのキャビテーションの発生現象は,ディーゼルノズル内や液体ロケット用インジェクター内でみられる現象である.キャビテーションが発生すると,生成する噴霧の特性が悪化したり, あるいはインジェクターにエロージョンなどの損傷を引き起こす.一方,この現象をうまく利用すると噴霧特性を改善できることも明らかになっている. 本研究では,キャビテーションと噴霧特性の関係を明らかにするとともに噴霧特性改善への利用法を提案する.下左図は,キャビテーション数を変えたときのノズル内およびノズルから噴出した液噴流の様子を示しており, キャビテーション数が小さくなるにしたがってキャビテーションが発生しやすくなることがわかる. また,下右図はノズルの流出係数に対するキャビテーション数の影響を示しており,キャビテーションの発生と共に流出係数は直線的に減少する.

4.微粒化メカニズムに対するリセスの影響

ロケット用噴射器では同軸気流噴射器が用いられているが,噴霧特性や燃焼特性の改善を目的として,液体の噴出口が周りの気流の噴出口より内側に入った構造(リセスという)をしている.この構造を持つことにより,各種の特性が改善される一方,噴霧の生成や流動が振動する現象が観察されている.本研究では,この噴霧生成の振動現象が発生する条件を明らかにし,その発生メカニズムを解明することを目的としている.下図は,振動が発生していない正常なときと発生しているときの噴霧生成の様子ならびに噴射器の流出係数の変化を示している.振動が発生すると,リセス内で噴霧生成が活発になり噴霧が横に広がる様子が分かる.また,噴霧生成が振動し始めると,噴射器の流出係数が急減する様子が分かる.

5.微粒化現象の解明と数値モデルの開発

流体の微粒化現象は,自動車,航空機,ロケット用原動機や化学工業,金属工業,医療機器などでみられる現象であり,自然界でもよくみられる.この現象は,それぞれの装置の性能を決めると重要な現象の一つであり,その解明が急がれている.しかし,微粒化現象は非常に微細でかつ高速であり,また種々の機構が重なり合った複雑な現象であるため,その解明は容易ではない.本研究は,液柱分裂や液膜分裂などの微粒化現象を取り上げ,そのメカニズムを実験的に明らかにするとともに,その解析結果を基に微粒化現象の数値モデルを開発することを目的とする.下図は,液柱分裂モデルをコンセプトと当研究室で新たに開発した液柱分裂モデルを用いて噴霧流動の数値シミュレーションを行った結果で,中心付近を飛行する液滴の軸方向速度の下流方向変化を示している.液滴ははじめ気流によって加速され,最大値をとった後,徐々に減速されており,実験結果とも比較的よく一致している.

6.噴霧流動の数値シミュレーション

近年のコンピューターの発展にともなって,燃焼器内の噴霧の流動や燃焼の数値シミュレーションがさかんになってきており,開発現場では欠かせないツールの一つになってきている.シミュレーションでは,実験に要する費用や時間を少なくすることができ,したがって装置の開発時間を短縮できる.そのシミュレーションを行う際欠かせないのが,噴霧の生成モデルである.従来では,噴霧特性の測定結果を噴霧の入力条件として与えていたが.この方法では,計算条件が変わるたびに噴霧特性を測定する実験を行う必要があり,シミュレーションのメリットがいかせない.本研究は,独自に開発した微粒化モデルを使用し,流れの解析ツールであるSTAR-CDと組み合わせて,実用的な噴霧流動の数値シミュレーションを行うことを目的とする.下図は,当研究室で開発した液柱分裂モデルを用いて噴霧流動の数値シミュレーションを行った結果である.大きな液滴は慣性力が大きいため,小さな液滴を次々に追い抜いていく様子が分かる.

7.PIV法による大動脈弓内の血流の可視化

心臓外科手術においては,人工心臓からの血液をカニューレを用いて大動脈に灌流するが,その際血管内壁に付着している粥状物質をはく離させ,それらが毛細血管につまったり血液の流路を狭めて,塞栓症などの合併症を引き起こす場合がある.これを防ぐには,カニューレから噴出した血流が大動脈内の流れをどのように乱すかを明らかにする必要がある.本研究は,胸部CT画像を基にガラス製の大動脈弓モデルを作成し,PIV法を用いて大動脈弓内の血流を可視化することを目的とする.大動脈弓モデルには,実際に外科手術に使用されている種々のカニューレを挿入し,血流の乱れや血管内壁にかかるせん断応力を測定して,合併症を引き起こさない最適なカニューレの形状を探る.下図は,PIVによる可視化結果を示している.左図は,大動脈の中心軸を含む長手方向断面内の速度分布ならびに流線を示しており種々のカニューレを挿入した場合の流れの変化が明らかである.右図は,中心軸に直角な横断面内速度分布ならびに流線を示している.長手方向断面や横断面内に渦が発生している様子がよく分かる.

8.大動脈弓内の血流の数値シミュレーション

当研究室では,大動脈弓内の血流の可視化実験を行っているが,実験ではどうしても物性値などの実験条件が限られてしまう.そこでこれらを補うために,本研究は,大動脈弓にカニューレを挿入した場合の大動脈内の血流を,数値シミュレーションでは,比較的容易に実験条件を変えることが可能である.種々の出口形状をしたカニューレを用いて,血流の数値シミュレーションを行い,合併症を防止するために最適なカニューレの形状を数値的に明らかにする.CT画像より大動脈の3次元モデルを再構成し,これにCADにより作成したカニューレモデルを組み合わせて,計算メッシュを作成した.下図は,計算に用いた大動脈モデルとシミュレーション結果を示している.右図は,血管内の血流の速度ベクトルを示しており,カニューレから噴出した高速液噴流が内壁に衝突する様子や,血管内に生成される渦の様子が分かる.

9.固定翼小型自律飛行ロボット(UAV)の開発

本研究室では他の研究室と共同で,予め決められた場所を自律飛行によって自動的に巡回できる小型固定翼飛行ロボット(UAV)を開発している.この研究で対象としている飛行ロボットは,翼長2m程度の小型模型飛行機に,小型カメラ,通信装置,自律飛行のためのGPSセンサーや小型コンピュータを搭載したものであり,予めインプットされた場所を,GPSと制御用コンピュータによって自動的に操舵しながら巡回できるものである.UAVの用途として,気象観測,大気汚染観測,自然破壊の監視,植生生育観察,災害の視察,交通監視,防災レスキュー活動の支援,送電線監視などが考えられる.下図は試作したUAVと,地上での実験風景を示している.現在試作機を用いて,上空での自律飛行実験を行っており,安定に自律飛行することを確認している.


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